年間総労働時間が減り続けている!?
『どうする 労組の「働き方改革」(上)』( 西尾 力の「BEST主義の組合活動のススメ」 )
という記事を読んでいたところ、あるグラフが掲載されており、それについて思ったことを少し書きます。
日本の年間総労働時間の平均は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば2015年で1734時間であり、1993年の1920時間と比較して、年間186時間も減少しています
ふむ、1993年から、22年後の2015年には、年間186時間も労働時間が下がっているのか!えッ、ほんまかいな?
と思っていると、すぐに、だけどだまされてはいけないですぞと、このように解説されています。
■年間総労働時間の統計の見方に注意
(中略)実は、この統計数字にはからくりがあって、分母の労働者数にパートタイム労働者なども含まれているからです。パートタイム労働者を除いた、一般労働者の平均でみると、1993年は2045時間で、2015年でも2026時間と、ほぼ変わらない状態にあることに注意が必要です。
これが、そのグラフです。
見にくいかももしれませんが、平均総実労働時間(パートタイム労働者を含む)と書かれています。
また、このグラフには、パートタイム労働者の割合も載っています。
平均総実労働時間が減少し続けている理由は、パートタイム労働者の割合が増えているので、総実労働時間の平均が減少しているだけだったのです。
そして、一般労働者の平均総実労時間はほとんど横ばいです。
このグラフはパート比率も同時に掲載されていたり、パートタイム労働者を含むと明記されているので、良心的に作成されているなと思いますが、これを、一部分だけを抜き出し悪用することもできるなと思いました。
「平均総実働時間(パートタイム労働者を含む)」の折れ線グラフだけを抜き出し、さらに「パートタイム労働者を含む」という記載をなくしたグラフだったらどうでしょう。
与党がやってきたことは正しかった!働き方改革の成果が出ている!なんてことに使われかねない。
次のグラフは、グーグルで「平均総実労働時間」で画像検索したら最初に出てきた画像です。
平成15年までのデータですが、平成27年(2015年)では、先程あげた数字では、1734時間でしたね。このグラフの折れ線はさらに下降します。(ただし、最初のグラフでは事業所規模が5人以上なので少しちがいます)
総実労働時間は右肩下がりです。
しかし、これは、一般労働者だけの数字でしょうか、パートタイム労働者を含めた数字でしょうか、また、パートタイム労働者の割合の推移は?記載はありません。
この2つめのグラフだけ見せられると、労働時間は年々減ってきている、働きやすい社会になっていっていると、錯覚してしまいそうです。
このような怪しいデータやグラフはあちこちに溢れているんでしょうね。見抜ける力を付けていきたいもんです。
ちなみに、『どうする 労組の「働き方改革」(上)』という記事の主旨とは関係ありませんのでよしなに。
おしまい。