ノーベル賞、大隅教授に学ぶ人材育成
ノーベル賞を受賞された大隅教授。連日ワイドショーなどでも取り上げられており、ご存知の方も多いと思います。
何気なくテレビを見ていると、大隅教授の教え子達が大隅教授の人となりについてインタビューに応えていた。
「教授が怒っているところを見たことがない」
という学生の発言が耳に止まった。
その学生の発言に対して、大隅教授は、「怒ることで、エネルギーを使うのが嫌なだけです」というようなことを返答していました。
「幸いなことに、怒らなくても済むような優秀な学生に恵まれただけです」というような事も言っておられました。
(余談:怒るのではなく、ほめることで良い行動を起こさせようとするテクニック。トイレの張り紙「トイレを汚すな」ではなく「いつもトイレをキレイに使って頂きありがとうございます」のほめて良い行動を行わせるやり方ですね)
そして、テレビの放送は次の話題へ移っていきました。
職場での人材育成
「教授が怒っているところを見たことがない」という言葉が耳に残ったまま、考えは職場においての、よくある鬼上司論、仏上司論へ。
大きい声で指図をし、人を動かし、統制をとる。頼もしく見える上司。
一方、方向性を伝えたら、あとは自分たちで考えて行動させる。指図はしない。怒らないし叱ることもしない上司。
私は、この手の話に興味があります。
怒ること、命令すること、強制すること、比較すること、競争させること、報酬を与えることetc.
これらのことは行動を起こす動機付けとしてどうなのか。
怒るのはダメだけど、叱るのは良いこと
なんていう言葉もあり、複雑。一筋縄にはいかない。
世の中の怒らない上司には二通りあり、
大隅教授のように、無駄なのであえて怒らない人(むしろ褒める)と、
怒ることが出来ない人がいます。
では、
怒ることが出来ない人はどうすればいいのでしょうか。
それでも心を「鬼」にして、割りきって怒っていくべきなのでしょうか。
それとも、
怒れないのなら、怒ることをあきらめて、別の方法、「仏」の上司を目指すべきなのでしょうか。もちろん中間を取るという考え方もあると思いますが、軸として、方向性としてどちらを取っていくべきか。
本屋や図書館に行けば、嫌というほどこの手の上司としての人材育成の指南書が置いてある。
そして、おおかた、部下のために「鬼」になることが正解とばかりに書かれた本が主流となっている。
未読ですが、「仏の心で鬼になれ」なんてタイトルの本まであって、さっぱりわやです。
「鬼の上司」の罪とは……
「仏の上司になれますか」金平敬之助・著
という、何度か紹介させて頂いている本がある。
私の経営哲学の基礎になっている本なので、これからも紹介し続ける予定の一冊。
「仏の上司」になれますか?―部下を活かし組織を変える究極の人材育成論
- 作者: 金平敬之助
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2002/02
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その中に、このような一節がある(一部引用)
私は鬼になれない
入社10年目だった。はじめて大きな販売組織を任された。
営業職員が280名前後いた。
支社長として赴任直後、さっそく先輩から忠告された。
「部下から嫌われなくてはダメだ。君は優しすぎる。鬼の支社長になれ」
好意からの忠告だ。ありがたいと思った。
でも、心のなかではつぶやいていた。
「私にはムリ。私は鬼になれない」
理由は明快だ。
私自身、鬼の上司に仕えるのが嫌いだからだ。
「命令・強制」はとくに苦手だ。
一方、私は人間はだれでも同じだと思っている。
だから、自分が嫌いなものは部下も嫌いなはずだ。
それを知っていて鬼になるわけにはいかない。
自分が嫌なことは、部下だって嫌なはず。こんな当たり前のことを上司になると皆忘れていく。
上司は鬼にならなくてはいけないのか?
それが正解だと思い込まされているだけではないのか?
事実、鬼上司になることを推奨する書籍の方が本当に多い。
鬼になれない人に勇気、自信、鬼になれないことは間違いではないという方向性を示してくれる私が好きな文章の引用でした。
さらに、この本の帯には、この本の紹介としてこう書かれている。
「鬼の上司」の罪とは……
・怒鳴る上司は怒鳴る部下を育てる
・号砲が鳴らなければ走りださない部下をつくる
・短期間の成果しか出していない
・優秀に育つだろう人材に去られている
・上にものを言えない集団をつくってしまう
・部下が仕事で手抜きをするようになる
・出世欲、収入欲で人を動かそうとする
・客不在の職場風土を作ってしまう
いかがでしょうか、思い当たるフシだらけではないでしょうか。
モチベーション2.0と3.0の比較とそっくりですね!
今回は一つ一つ説明は行いませんが、今だに鬼上司が歓迎されるような企業は方向転換の時期ではないでしょうか。今からでも遅くはありません。
大隅教授のノーベル賞受賞会見を見たことから、発想が飛び人材育成について改めてあれこれ考えさせられたという話でした。
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