ゲーテさんに捧ぐ
「東京ゲーテ記念館」に行ってきました。
これまでも東京に来た際に立ち寄りたいスポットのひとつでしたが、休館日だったり休館期間中だったりでなかなか立ち寄れずにいました。
ご存知でしょうか「東京ゲーテ記念館」。
東京メトロ南北線の「西ヶ原駅」から少し歩いたところにあります。
東京メトロ西ヶ原駅。大阪住まいの僕がまず訪れることはないだろう地。一期一会の気持ちで西ヶ原駅に降り立ちました。
駅にあった周辺地図。左側に「ゲーテの小径(こみち)」、左下の青い建物が「東京ゲーテ記念館」です。
西ヶ原一里塚~ゲーテの小径~ゲーテパーク
こちらも駅にあった一里塚についての展示物。徳川将軍が日光東照宮に参詣するために用いた街道があります。
一里塚交差点。
画像の左側、「ゲーテの小径(Goethe Street)」の案内が出ています。
「ゲーテの小径とゲーテパーク」https://goethe.jp/local/goethestreet-park.html
ゲーテの小径を入ったところにある記念碑。
そのまま少し歩くと、ゲーテ記念館前ポケットパークというスペースがあります。
Goethe Park
『ゲーテはファウストを82年間の生涯のうち、23歳から82歳までの60年をかけて完成させました』とあります。完成まで60年!
そして、道路を挟んで見えるのが、東京ゲーテ記念館。
本当にこの建物であっているかちょっと不安…
ここで合っていたようです。
が、入り口のドアに貼り紙がッ!
臨時休館のお知らせではなかったようだ。よかったよかった。
『見学の方はインターフォンを押してください』
ちょっと入りにくい…かな。だが、今日はここを目当てにやってきたわけだし、ためらいなくインターフォンを押す。
いざ、館内へ!
in東京ゲーテ記念館
ちなみに入ってから出るまで、来館者は僕一人でした。入館は無料!
写真もどうぞ撮ってくださいということでしたので、展示物をあれこれ撮ってきました。一部ですが、紹介します。
まず目に飛び込んできたのが、
ゲーテさん…やんね。じゃなかったら誰やねんってことですもんね。
言うときますけど、僕、ゲーテについてほとんど知らないですから。「ファウスト」「若きウェルテルの悩み」っていうタイトルは聞いたことあるなーっていうレベルですから。だったらなぜ来た?というのはあとで説明します。
資料展示室入り口。
展示室内。
ここに収められているゲーテ資料はほんの一部。
100年以上前の「ファウスト」が展示されています。
上がロシア語版、下が英語版。
重厚感たっぷりです。
いろいろな顔を持つゲーテ。
歌劇のポスター。B席だと150円という時代。
歌劇関連の展示。
各国版「ファウスト」。
そして、こんなのもありました。
漫画版「ファウスト」。これなら僕にも読めそうかも。
左上の本が、初邦訳の「ファウスト」。1904年8月25日と書いてあります。
新渡戸稲造の「ファウスト物語」(1910年)というものもありました(左下)。
受付でいただいた用紙。
原文と翻訳されたものの食い違い部分についての考察がされています。
翻訳者によってゲーテの意志とは少し違うものに翻訳されることへの危惧がうかがえます。
東京ゲーテ記念館の解説によると、
日本風に翻訳(解釈)してしまうと、いつまでたっても日本的思考という枠からは出られない。
新しい価値観を取り入れることの重要性がよくわかります。
最後に、
なぜ、僕が東京ゲーテ記念館に興味を持ったかという話
高校生の頃、93年とかそれぐらいの時分、阿刀田高さんの小説にハマっていました。当時、文庫本で買える本や図書館で借りられる本は9割方読みました。
その中で、一番のお気に入りだったのが、この「夜の旅人」(ゲーテの「旅人の夜の歌」という詩から取ってこのタイトルを付けたのでしょうか)。
この小説のモデルになっていた人こそが、東京ゲーテ記念館を創設した粉川忠さんでした。
この小説のことを思い出しながら、展示物を見ていると粉川忠さんの思いが伝わってきて、より胸が熱くなりました。
そんな、粉川忠さんについての展示物もあるのかなあと思っていましたが、それはありませんでした。おそらく、本人の意志なのでしょう。
東京ゲーテ記念館のホームページに記載されている「夜の旅人」についての記述。
粉川忠は、阿刀田高氏の『ナポレオン狂』と『夜の旅人』という二冊の小説のモデルとして、ゲーテ本の「コレクター」という印象が定着していますが、これは、正しくはありません。自分で本を探し求めて買い集めたわけですから、本の収集に興味がなかったとはいえませんが、財団発足後の活動は、彼の収集趣味の継続や拡大ではなく、非常に組織的なものでした。
自らナポレオンの生まれ変りと信じ切っている男、はたまたナポレオンの遺品を完璧にそろえたいコレクター。その両者を引き合わせた結果とは?ダール、スレッサーに匹敵する短篇小説の名手が、卓抜の切れ味を発揮した直木賞受賞の傑作集。第32回日本推理作家協会賞受賞の「来訪者」も収録する。
粉川忠さんと「ナポレオン狂」は別物として考えたいけれど、阿刀田さん自身が粉川忠さんをヒントに「ナポレオン狂」を書いたと言っている以上、それが真実なのでしょうが、粉川忠さんにとっては、ちょっとひどい扱いかなと思います。
おまけ。
Goetheの日本語表記ですが、ゲーテ、ギョエテの他に、こんなにあるそうな。
おもしろいですね。
粉川忠(こがわ ただし、1907年6月19日-1989年7月17日)は、日本の実業家。文献収集家。ゲーテ研究家。ドイツの文豪・ゲーテの書籍や関連文献を生涯にわたって集めて、東京ゲーテ記念館を開館させた人物として知られている。
ゲーテを知りたい人に、すごくわかりやすく解説されています。
ありがとうございました。