会社の品格を失わせる浮利・四比

 

金平敬之助さんのひと言の思いやりという本を読み終わったので、忘れないうちにまだ書ききれていなかった印象に残ったエピソードを記しておきます。

 

 

会社の品格を失わせる浮利・四比

 

1956年に、私は「品格のある会社」に入社した。

91年に、恥ずかしながら「品格のない会社」を退職した。

この間、会社はなぜ変わったのか。

答えはひと言で済む。

 

「浮利を追ったから……」

 

しかも、浮利を追うのにもっとも安易な方法を選んだ。

四比で職場を動かしたのだ。

四比とは、「他社比」、「前年比」、「前任者比」、強制された「計画比」のことだ。

これで、働く人々を追い続ければ、間違いなく会社は品格を失う。

 

この四比は全て会社の都合。会社の都合のために客を利用する。そして、ノルマでもって従業員を利用する。

数字が正義の世界になってしまっているわけですね。四半期ごとの決算、半期ごとの決算なんかに追われるとやはりこうなる。品格なんかに構っていられない。従業員満足から顧客満足が生まれ、その結果が数字だということを忘れてはいけないと思う。

ちなみに、著者の金平さんが勤めていた会社は、保険会社です。まさに数字の世界(と思わされているだけか)。

「浮利を追うのにもっとも安易な方法を選んだ」という会社の経営方針に対する呆れまじりの言葉は重い。

そして、あいかわらず、四比のようなものをひたすら現場に詰めるのが自分の役割だと勘違いしている会社の幹部は多い。

それにしても、「前任者比」なんてものは初めて聞いたけど、なんておそろしい指標なんでしょう。

 

 

親からの励ましのひと言

 

アメリカの元GE会長、J・ウェルチ氏の親のひと言。

幼いときからどもる癖があった。

母親の励ましの一言がいい。

おかげでどもりを、その後気にすることさえなかった、という。

 

「お前は頭がいいからどもる。お前の頭の回転の速さに追いつく舌など、誰ももっていないよ」

 

やはり、「親からの励ましのひと言」は明るいほうがいい。楽天的なほうがいい。

 

ジャック・ウェルチアレルギーを患っている僕ですが、これはいいエピソードだなと思う。

 

 

挨拶が長い人

 

野球評論家の豊田泰光氏は率直にものを言う人と聞く。

あるパーティに出た。

先に挨拶する人たちの話がやたらに長かった。

やっと自分の番がきた。

こらえかねたのだろう。

きびしい言葉が口から出たようだ。

 

「長い挨拶は頭の悪い人がやることです。みなさん、そう思いませんか」

 

これを聞くと、直前に話した人たちは赤面した、と思うだろう。

でも、それは心配ない。

私の経験で、長話をする人が「自分の話は長い」と自覚していることはまずゼロだからだ。

 

挨拶が長い人、予定されていた時間をオーバーして講話を続ける偉いさん。そんな人達が生産性の話しをしていたりして頭がクラクラすることもしばしば。

 

 

次が最後。

 

 

先渡しの礼状

 

金平さんが知人から聞いた、手紙を書くのが好きなその娘さんたちのこんなエピソード。

 

妻の実家の祖父母。学校の担任の先生。近所のおばあちゃん。何かしてもらったら、すぐ「ありがとう」を書きます。

先日は新築中のわが家の大工さんに、先渡しの礼状です。

「かわいい部屋をありがとう」

これでは大工さんも手抜きできないでしょう。

 

この娘さん、分かっておられる。

「かわいい部屋をお願いします」ではなく、「かわいい部屋をありがとう」。

大工さんがより充実感を持って仕事に当たってくれる気がします。

 

蛇足ですが、たとえば、販売ノルマがあったとして、達成しろ達成しろ、達成まであと何円?一日あたりではいくら?じゃあどうやって達成させる?と詰められ達成を強制されるよりも、まだ達成していないのに、上司から、「いつも達成してくれてありがとう」とだけ言われたほうが、よーし、達成に向けて挑戦してやるぞ!という気にさせられる。

(ノルマは嫌いですけどね。浮利の話で言った四比そのものですからね。顧客には関係のない会社だけの都合ですし)

 

 

以上、印象に残った部分を書き留めてみました。 

 

 

この本について今までに投稿したもの。

興味を持った方はどうぞ。

 

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