ずるくない人

 

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さてみなさん、だれでも『ずる』をした事があると思います。

別に犯罪に関わるようなものでなく、軽いずるなんて生活していく上であちこち溢れていると思います。ちょっと仕事をさぼってみたり、ニュースを見ていても政治や経済など様々な分野でもずるが無いとは言い切れない。

例えば、こういうジョークがある。

8歳のジミーが、学校の先生から手紙をもらってきた。

「ジミーは隣の生徒から、鉛筆を1本盗みました」

父はカンカンに怒った。ジミーにこんこんと説教し、自分がどんなに驚き、がっかりしたかを話して聞かせ、二週間の外出禁止を申しわたした。

そして、父は最後にこう結んだ。

「それにジミーや、鉛筆がほしいなら、そう言えばいいじゃないか。なぜ父さんに頼まない?鉛筆くらい、職場から何十本だってもって帰れるのを知ってるだろう?」

 ずる――?とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)より

 

 

閑話休題

 

タイトル通り、今回は、ずるをしなかったある有名な逸話を紹介したいと思います。

 

アメリカの伝説的ゴルファー、ボビー・ジョーンズ氏をご存知でしょうか。

ゴルフをやらない人には馴染みがないかも知れませんね。私も知りませんでした。

 

ゴルフには基本的には審判がいません。

打ちにくいラフで誰も見ていないからといって少しボールを転がしてみたり、木が邪魔な時は少しボールをずらしてみたりしようと思えば出来ます。

だからといって普通そんなことはしませんよね?ゲームの楽しみが損なわれてしまいます。

 

たとえば、ボールを打ちやすくするためボール周辺の環境を整えていた事が原因で、打とうとした時に草の動きで意図せずボールがほんのちょっと動いてしまったら?

さて、一打として打数に加算しますか?

 

 

 1925年の第29回全米オープン

 

11番ホール、ボビー・ジョーンズの放ったティーショットはグリーンを外れ、横にあるマウンドの急な坂の途中に止まりました。そのボールをプレーするべくスタンスを取り、アイアンクラブがラフの草に触れたとき、微かにボールが動きました。

ボビーは、そのわずかな動きを誰も見ていなかったにもかかわらず、「アドレス後にボールが動いた」と申告し、自分に1罰打を科してプレーを続けました。

このペナルティーもあり、全米オープンプレーオフで敗れました。同伴プレーヤーだったウォルター・ヘーゲンは「誰も見ていないので、ペナルティーの必要はない」と進言したそうですが、ボビーは頑として聞き入れませんでした。

この試合後、全米ゴルフ協会にはボビー・ジョーンズの“正直な申告”に数千通もの賛辞の手紙が舞い込ました。

それがボビーには心外だったらしく、「私が銀行で金を盗まなかったからといって誰も褒めないでしょう?ゴルファーとして当然のことをしたまでです。自分を騙すぐらい悲しいことはありませんから」と言って応えたものだから、世界中のゴルフファンは改めてボビー・ジョーンズの「ゴルフを大切にするフェアプレーの精神」に深く感銘を受けて、当時のゴルファーは、みんなボビーの虜となりました。

ゴルフの「球聖」ボビー・ジョーンズに学ぶ「正直」の効用 - 谷光高 [マイベストプロ大阪・和歌山]より

 

 

なんと、同伴プレイヤー(つまり対戦相手)までもが一打に入れなくてもいいよ、と言ってくれたにも関わらず、ボビー・ジョーンズは聞き入れなかった。

このエピソードが賞賛されたほどなので、当時はおそらくそういう場合は一打に加えなくても構わないという、暗黙の了解、共通意識が存在していたのかもしれない。対戦相手の発言からもそれが伺える。

(その後のルール改定で今回のようなケースでは一打に加えなくて良いということになったようです。)

 

もし審判がいたとしたら、どうだったでしょう。そして、審判もボールがかすかに動いたことに気づいていなかったとしたら。私だったら……

審判がいないからこそ、ずるはしない。審判は自分。ゴルフが紳士のスポーツであり、最大の敵は自分であると言われている由縁が垣間見れたような気がしました。

 

監視者(審判)がいないからこそずるをしない。監視者は自分であり、良心の葛藤が不正を律する。

逆に、監視者がいれば、監視者にバレなければずるはOKという空気になってしまう。そのような皮肉っぽさが、誰もが持っている正直者ごころをくすぐる話ですね。

 

人は環境に流されてずるをする。性悪説であることは否定しません。だからこそ性善説という言葉が今でも信じられているわけで。

大それたことを言うつもりもありません。ただ、自分に正直に行きていければとそう思えるエピソードでした。

 

 

 

最後に、ボビー・ジョーンズ氏名言の名から一つ紹介

 

  ゴルフには、トーナメントゴルフとゴルフがある

 

 「トーナメントゴルフではただの1打も気をゆるめてはいけない。
ただの一度もだよ。
たった1打の差で勝ったり負けたりするのだから、
ほんとに全ショット、全神経を費やし集中してプレーするのだから、
そんなゴルフって楽しいかな?
仲間と語らったり、いいショット、悪いプレーに
一喜一憂しながらラウンドするのが、本来的なゴルフじゃないか……」

 ボビー・ジョーンズ語録、名言集 | ゴルフダイジェストTVより

 

  

 

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 ボールが動いた時(ルール解説)より

 

 

ボビー・ジョーンズ ~球聖とよばれた男~ [DVD]

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ずる――?とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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