素敵な?選択肢

さてみなさん、お立ち会い。

欲しい物を買うとき、他の商品や他の店と比べて、どこで買おうかと調べて買う。特に高い商品なんかはそうやって慎重に買ったりしますよね。また、松竹梅などのプランが用意されていた場合どれにしようか考えます。もちろん私もそうしています。

 

この店の商品はあの店よりも安い、この価格は通常価格より安い。だから買う。このプランはそのプランよりもこういう点で優れている。だからこれを選ぶ。

自分で選んで買っているわけです。

 

しかし、

 

自分で選んでいるつもりが、じつは選ばされているとしたら?

 

行動経済学を勉強していて、こんな例を見つけました。

今回はこちらの本からの紹介です。 

 

 

エコノミストの三択

 

いきなりですが補足しておくと、エコノミストという雑誌があります。簡単に言うと世界の政治や経済情報などが載っている雑誌です。ロンドンエコノミストと呼ばれています。

www.economist.com

 

エコノミストの年間購読の申し込み書を見ると、

選べるプランは3つ。

 

A. ウェブ版だけの購読・・・59ドル

B. 印刷版だけの購読・・・125ドル

C. 印刷版とウェブ版のセット購読・・・125ドル

 

あなたなら、どのプランを選びますか。

 

これを、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院生100人に選んでもらったという調査です。

 

よく見ると、BとCのプランが同じ値段です。ああ、きっと雑誌社の記載ミスですよね。

と雑誌社に問い合わせたところ、返ってきた返答は、合ってます。これで間違いありません。とのこと。Cのプランは、ウェブ版はデータを配信するだけだから、印刷版を注文したら無料で付いてくるってことなのか?経費もかからなそうだし…!?

 

Cのプランがお得ですかね。

または、電子書籍が当たり前になりつつある現代ではAのプランを選ぶ人も多いかもしれませんね。

Bのプランを選ぶ人はいますでしょうか。

 

結果は以下のとおり。

 

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A. ウェブ版だけの購読・・・16人

B. 印刷版だけの購読・・・0人

C. 印刷版とウェブ版のセット購読・・・84人

 

さすがに、BとCのプランは同じ値段なので、Bのプランを選ぶ人はいなかったようです。

数年前の調査(この本が日本で出版されたのは2010年)としては妥当な結果とも言えると思います。

 

さて、本題はここからです。

 

Bのプランを選んだのは0人。

だったら、選択肢としてBのプランは外してもいいはずですよね。

 

そこで、死に筋商品であるBのプランを省いて、選択肢をAとCのプランだけにして、もう一度同じように調査をし直しました。

 

A. ウェブ版だけの購読・・・59ドル

C. 印刷版とウェブ版のセット購読・・・125ドル

 

よけいなBのプランが省かれました。値段はそのままです。

どちらのプランにしますか?

 

急に選ぶのが難しく感じたのは私だけでしょうか。

うーん、Cはなんか高く感じるし、印刷版はあきらめて安いAのプランにしようかな……

(先ほどの結果にもありますように、最初からAのプラン一択の人も当然おられるでしょう)

 

マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院生100人が選んだ結果はどうだったでしょうか。

Bはもともと0人だったわけだし、結果は変わるわけない!…はずですよね?

 

しかし、

 

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結果は、

 

A. ウェブ版だけの購読・・・68人

C. 印刷版とウェブ版のセット購読・・・32人

 

最初の3つのプランの結果をもう一度見てみると、

 

A. ウェブ版だけの購読・・・16人

B. 印刷版だけの購読・・・0人

C. 印刷版とウェブ版のセット購読・・・84人

 

Aのプランは16人から、68人にまで増えてしまいました。

 

 

なにが起きたのでしょうか。

 

ここからは、私の考察(というほどたいそうなものではないけど)を交えた、本題の本題。

 

①雑誌社が誰も選ばないであろうBのプランをあえて組み込んだ理由

 

結果、どちらが雑誌社には儲けが多かったでしょう。

値段の高いCのプランが多くの人に選ばれた、最初の三つの選択肢での購読広告ですよね。

しかし、選択肢が二つになると、安いAのプランを選ぶ人が急増しました。多くの人がBのプランがなければAの安いプランを選んだ。

売り手としては、Bのプランをあえて組み込むことで、みごとCのプランを(もちろん全員にではないにしても)選んでもらうことに成功したわけです。買い手は選ばされたとは思っていないばかりか、Cのプランを選んでかしこい買い物をしたとさえ思っている!WIN-WINてやつですね。(くどいようだが、大半の人はAの安いプランでよかったのに)

 

そう、Bのプランは、Cのプランを選はせるための、捨てプランだったわけです。おとり商品とも言います。

商品やサービスを選ぶ際、売り手に誘導されずにかしこい買い物するためには、私たち消費者はこのような仕組みを知っておいても損はなさそうです。

そして、自分が売り手側に立った場合、こういうおとり商品を選択肢に組み込んでおくと買ってもらいたい商品を選んでもらいやすくなります。また、おとり商品が比較される商品やサービスとなるため、買い手が選びやすくなるという利点もあります。

 

 

 

②統計・データの悪用にご用心!?

 

この二つの調査、これが企業が自社商品の宣伝に使うためのアンケートだったらどうでしょう。

結果が180度違いましたよね。初めはCのプランが圧勝。2度目の調査だとAのプランが圧勝。

たとえば、あなたがAまたはCのプランの利害関係者だったとして、世間にアピールしたいとしたら、どちらの調査結果を用いますか?

 

選択肢を少しいじるだけで調査結果が180度変わることもある。世間には統計データを使った宣伝があふれています。そのような統計データは、調査方法や選択肢をいじることでいくらでも操作出来るとしたら怖くありませんか。

恐るべきことに、この二つの結果自体は捏造したわけではありません。事実です。

 

アンケートなどの統計データがいかに不確実なものか。人の行動・考動を変えてしまうようなアンケート結果、何かを買わせようとするための統計データを見た時は、眉に唾をつけるのを忘れないようにしたいものです。(私も統計データを用いる際は気をつけます)

 

以上、買い物にまつわる「素敵な?選択肢」のお話でした。

 

 

<以下は今回の記事に関してのオススメ動画・書籍紹介>

 

www.ted.com

ダン・アリエリー:我々は本当に自分で決めているのか?

 

 

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「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

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