代替報酬のススメ―いやな仕事を楽しみに変える工夫

「代替報酬(だいたいほうしゅう)という言葉をご存知でしょうか。

 

代わりの報酬?

どういうことでしょうか。簡潔に申し上げますと、

ずっと後になって払われる報酬とは別に、今すぐ代替するもので払ってもらう。

という仕組みのことです。

行動と結果が同期しいていないと人のやる気は次第に失せていきます。

 

ルーチンワークや重労働など退屈だったり辛い仕事や、日々の生活の中でも、家事などの退屈でできれば避けたい事柄にこの「代替報酬」という仕組みがめっぽう役に立つのです。

 

では、「代替報酬」の利用例を具体的に。

まず、分かりやすい例がこちらの超有名な画像です

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よく見ると、みなさん階段を昇っています。しかしすぐ横にエスカレーターがあります。エスカレーターが壊れているのでしょうか?

いいえ、違います。

 

 ↓ちなみにこちらは普段の階段の画像です。エスカレーター大人気です。

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最初の画像との違いは、、、そう!

階段がピアノになっているじゃ、あ~りませんか!

もちろん階段を踏みしめる度にドレミの音が鳴ります。

スウェーデンでは国民の肥満が問題になっており、エスカレーターではなく階段を使用してもらうにはどうしたら良いだろうかという実験をフォルクスワーゲン社が実験を行ったそうです。そして、このアイディアによって、階段の利用率が66%もUPしたそうです。

 

すこし興味が湧いたという方はこちらの動画も参照してみてください。

1分48秒の短い動画です。

これを見て僕の人生はちょっと前向きなものに変わりました。

Piano stairs - TheFunTheory.com - Rolighetsteorin.se

 

ポイント①

「健康のために階段を利用しましょう!」という張り紙をしたり、呼びかけをしたとしてもだれも階段を使うことに見向きもしなかっただろうということです。

健康のためには階段を使ったほうがいいのはだれでも頭では理解しています。

しかし、「健康のために階段を利用しましょう!」と呼びかけられても、ただの無味乾燥な階段に誰が登ろうというのでしょうか。それは、報酬が与えられるのが今ではなく将来の“いつか”だからです(この例では漠然とした将来の健康)。

 

この「ピアノ階段」では、将来の健康のためではなく、今すぐ得られる「楽しみ」が代替報酬になっているわけです。

 

ポイント②

じつは「ピアノ階段」に楽しみを見い出し、利用した人の動機が重要なのです。

「健康のため」が階段利用の動機に“なっていない”ことが重要なのです。

健康のためではなく、「楽しいからやる」がモチベーションになっているわけです。

(余談ですが、「楽しいからやる」これは、モチベーション3.0という考え方にも通じています。モチベーション3.0については、また独自の見解を加え論じたいと思います)

 

目的をスライドさせ、結果的に思い通りの方向に導くことも代替報酬の役割の一つと言えます。

「健康のため」という目的は見事どこかに飛んでいってしまっています。

 

もう一つ代替報酬の例をご紹介します。

NHK教育で放映された行動経済学ダン・アリエリー教授の「白熱教室」での文字起こしです。

 

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歯磨きが味気ないつまらないものだったら?代替報酬とはつまりこういうことなのです。

(またまた余談でさらに決め打ちをさせていただくと、歯磨き粉にはたいてい発泡剤が入っています。そうすることで泡立ちを良くして爽快さを増しております。飲料でいうと炭酸のように。しかし発泡剤の入っていない歯磨き粉も存在する。そしてその発泡剤なしの商品のリピート購入率は低いように思う。少なくとも僕は爽やかさを実感するため発泡剤入りを選ぶ。しかし、実は先ほどのフロスと同じように、発泡剤が入っていないほうが歯磨きには適している。それでも代替報酬感が得られやすい発泡剤をメーカーは配合しているのである)

 

 

他に、自身の例で言うと、

仕事で重い荷物を運ぶ時は筋トレだと思ってやっています。

荷物を持ち上げる瞬間、フンッ、と息を吐き腹筋に力を入れる。充実感がたまりません。

ただ、辛いなぁ、めんどくさいなぁ、と思いながら仕事をするのと、筋トレだと思って割れた腹筋を想像しながら仕事するのとでは、どちらが楽しいでしょうか。

職場や生活の場には、代替報酬を取り入れると楽しくなることがいっぱい隠れています。

 

しんどい仕事はしんどくないように工夫すればいい。考えるのを面倒臭がってはいけない。

何事も自分次第、工夫次第で楽しくなるということです。

「ピアノ階段」のようにコストを掛けなくても、意識を変えるだけで代替報酬を得られることもあります。

 

そして、管理者の仕事というものは、自分の仲間・部下が楽しく働ける「ピアノ階段」を作ってあげることだと思います。

職場の上司や組織、経営陣、部活の監督・キャプテン、サークルの主催者、塾の講師、スポーツジムのインストラクターなど、モチベーションを上げてあげる立場にいる人にとって重要な任務なのではないでしょうか。

そして、もしあなたが何がしかの管理者・部下を持つ存在であれば「ピアノ階段」の動画をその方たちに見せてあげてほしいと思います。

不満だらけの仕事や作業、勉強もやり方しだいで楽しみに変えられるんだということを教えてあげれば前向きな集団になるのではないでしょうか。

 

「代替報酬」とはポジティブに生きるための便利ツールなわけです。

 

仕事がつまらないと考えているあなた、ちょっと視点を変えてみてはいかがでしょうか!?

 

 

 

 

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文庫版も出版されてます。

 

 

 

 ※代替報酬について知識をひけらかすだけでは何もおもしろみがないので、独自の見解と主張を織り交ぜました。故に稚拙な考察も含まれている事をご了承ください。